人前で話す緊張の場面、アナウンサーがあがり症対策として推奨する勝利の3本柱
士業・専門家のトークスキルを磨いて売上向上につなげる、合同会社STYのアナウンサー、堀江政史です。
政治・国際・スポーツの歴史的瞬間など、どんなに場数を踏んだアナウンサーでも、手が震えるような緊張する状況は少なくありません。
重大な一瞬は、後日、資料映像やハイライトで使われる可能性があります。
そこでのリポートや実況を担当するとしたらミスはしたくない、そんなプレッシャーを感じることだってあります。
呼吸数が増えてくる、心臓の音が大きくなる、そうした緊張する状況で、安定してパフォーマンスを引き出すため、アナウンサーの私が何をしているのかをお伝えします。
人前で話すと緊張してしどろもどろになるという士業の方、専門家の方、簡単に取り組める内容ですので、ぜひ、吸収して実践してくださいね。
Contents
頭が真っ白になるような人前で話す場面で、どれくらいの人が緊張を感じているのか
緊張しない人がうらやましい、という言葉をよく聞きますが、どれくらいの人が、人前で話をするときに緊張するのでしょうか。
民間が行ったアンケートの調査結果を、1つ、ご紹介します。
問)あなたは緊張しやすいタイプ?
とても緊張しやすい | 41.2% |
どちらかといえば緊張しやすい | 41.6% |
あまり緊張しない | 15.4% |
ほとんど緊張したことがない | 1.8% |
※出典:アサヒグループホールディングスお客様生活文化研究所
(全国の20歳以上の男女1,579人から回答、2009年4月実施)
いかがですか?
「とても緊張しやすい」と「どちらかといえば緊張しやすい」人は、全体の82.8%に上る結果が出ています。
そして、次のような質問もありました。
1位
大勢の前で話・スピーチをするとき
82.2%
2位
初対面の人に会うとき
36.5%
3位
新しい職場や仕事をするとき(人事異動など)
35.6%
4位
プレゼンや報告を行うとき
27.8%
5位
発表会や演奏会のとき
26.7%
6位
資格取得、入社試験や面接のとき
26.4%
7位
苦手なことを無理にさせられると(カラオケ、料理、運転など)
20.0%
8位
経験のないことをしなければならないとき
17.7%
9位
電話で人と話すとき
16.4%
10位
目上の人(上司、社長、年配者など)と話をするとき
13.3%
(全国の20歳以上の男女1,579人から回答、2009年4月実施)
というアンケート結果が出ています。
この結果を見てみると、緊張しないほうが珍しく、もしかしたら、緊張していると口に出さないだけで、ほとんどの人が、人前で話すときには緊張しているのでしょう。
このメルマガを書いている私も、大きなレース実況を担当するときには吐き気がするほど緊張しますし、どんなにベテランのアナウンサーでも、長期休暇明けの本番に臨むときは、手の震えを覚えながら、仕事をしているようです。
ブログをご覧のあなたも、人前で話すときにあがるとしたら、それは、特別なことではないと視点を切り替えてみてくださいね。
汗が止まらない人前で話す緊張した場面では、体にどのような変化が生じているのかを把握する
緊張の身体的なメカニズムを見てみると、
・不安や緊張を感じる
↓
・ノルアドレナリンの分泌
↓
・交感神経を刺激
↓
・臨戦態勢に入る
↓
・体温、血圧、心拍数の上昇
という流れになります。
ほとんど緊張しない人は、割合として極めて少なく、緊張をゼロにするのは難しいと考えてよさそうです。
それに、アナウンサーに指示を出すディレクター(私も担当しています)の視点から考えると、緊張したほうが集中力が増している状況なので、適度に緊張していてほしいものです。
ただ、極度の緊張はパフォーマンスに影響を与えるので、できれば、減らしていきたい…。
ポイントは、緊張の場面で何をするとリラックス効果をもたらすことができるのか。
アナウンサーの私が、どうやって緊張=あがりとつきあっているか、その対処法として、勝利の3本柱をご紹介します。
人前で話す緊張の場面でリラックス効果とあがりの軽減が期待できる対策「深呼吸」
まずは、深呼吸に注目します。
深く息を吸う深呼吸をすると、自然と、腹式呼吸になってきます。
この腹式呼吸は、横隔膜を下げて腹筋を広げて行う呼吸で、主に胸を広げて行う胸式呼吸と対になるものとして表現されます。
その腹式呼吸が緊張する場面でどのように役立つのか。
先ほども書きました、あがった状態の身体的なメカニズムをおさらいしてみますと、
・不安や緊張を感じる
↓
・ノルアドレナリンの分泌
↓
・交感神経を刺激
↓
・臨戦態勢に入る
↓
・体温、血圧、心拍数の上昇
という流れ、でしたね。
こうした緊張状態の中で、深呼吸をすると、リラックス効果が期待できるセロトニンという神経伝達物質が分泌され、緊張の度合いを減らしていきます。
からだが活発な状態になる交感神経が優位な状況から、からだをリラックスさせる副交感神経が優位になります。
そのため、大一番を前にして、胸の鼓動が早くなったり体の震えが止まらなかったりするときは、深呼吸をして自律神経を整えるようにしています。
本番直前であがることがあったら、ゆっくり腹式呼吸を繰り返して、頭も気持ちもリラックスさせていきましょう!
人前で話す緊張の場面でリラックス効果とあがりの軽減が期待できる対策「ストレッチ」
2つ目は、ストレッチです。
ストレッチも、副交感神経を優位にしてリラクゼーションをもたらす効果が期待できます。
また、緊張してネガティブな気持ちに変わり上半身が固まってしまうと、猫背になるなどして姿勢が崩れ、いい声が出しにくくなります。
そこで、立った状態から、両手をまっすぐ上に挙げ、背伸びをしながら背筋を伸ばします。
伸ばした状態から、一度、脱力をして、ゆっくりと姿勢を戻していきます。
からだを伸ばしてストレッチ、その後、発声しやすい自然な姿勢にします。
また、ゆっくりと腕の前回し、後ろ回しをして、肩や胸、背中の筋肉をほぐす動きも、気分を落ち着かせてくれます。
それから、私の場合は、自分に向けた意識を和らげるという意味も持たせています。
緊張する場面では、「失敗したらどうしよう」「できなかったらどうしよう」というネガティブな思考が、過度な緊張を呼ぶことが少なくありません。
放送席に座る私もそうです。
からだを動かすことで、自分に向けた意識を緩めるという状況を作ることも大切にしています。
人前で話す緊張の場面でリラックス効果とあがりの軽減が期待できる対策「白湯」
大きなレースの実況前など、緊張する場面では、私、白湯を飲んでいます。
もちろん、熱すぎると危険なので、温かいなーと感じられるくらいの温度です。
温かい飲み物も、心身をリラックスさせる副交感神経を優位にしてくれます。
また、緊張して臨戦態勢に入ったとき、体の重要な臓器に向けて血液を集中させようと末梢の血管が収縮して、手足が冷たくなるんですね。
真夏でも、緊張する大きな仕事では、手袋がほしくなるほど、手が冷たくなったことが何度もあります。
冷たくなると動きがぎこちなくなりますし、湯飲みに白湯を入れて手を温めるということもやっています。
緊張のシーンでは、普段の状況とちょっとした違いでも不安になりがちです。
そこで、冷たくなって動きにくくなった手や指を温めることで、少しでも動かしやすくしてあげて、いつもの状況に近づけるのです。
そして、特に、大きなレースの実況前になると、できれば、お茶をはじめとしたカフェインの入った飲み物を避けています。
これは、カフェインの作用で、ミスを誘発したくないからなんですね。
眠気覚ましに使う場面が多いコーヒーなどに含まれるカフェインには脳の興奮作用があると言われています。
緊張して興奮している状況にカフェインで興奮を上積みすると気持ちの抑えが効かず早口になりカミカミになってしまうおそれがあります。
緊張すると、消化器の機能も抑えられ、唾液が少なくなる傾向にあり、カフェインにも唾液を抑える働きがあります。
緊張状態にカフェインを合わせると、口の中が乾きやすくなり、口や舌の動きに悪影響を及ぼしかねません。
それでさらに焦ってしまって、失敗、また失敗と、悪循環になってしまうおそれもあります。
ちなみに、講演の演台に置かれている飲み物に注目したことはありますか?
実は、演台には、大体、常温の水が置かれていて、お茶を置かないのは、こうした飲み物のポイントが理由としてあるわけです。
人前で話す緊張の場面が近づいたら、対策として食事の時間や量も考える
実況を控えた一日、私は、食事をする時間や食べる量にも気を付けるようにしています。
私の場合、満腹になると眠くなったり声が出しにくくなったりするので、大きな仕事を担当するときには、時間を逆算して、軽く食事をとるようにしています。
また、甘いものを摂取すると、ネバネバした唾液が出てきて、しゃべりにくさを感じます。
こちらも、口や舌の動かしにくさを覚えて集中力が途切れ、カミカミになってしまってはどうしようもないので、本番前に甘いものを食べることは、できるだけ避けるようにしています。
飲み物の種類、食事の時間や量にも、工夫してみてくださいね。